カンボジアの建設業の労働市場
CDLの鳴海です。カンボジアで人材紹介会社を運営しておりますと、そもそもカンボジアにおいて産業ごとの労働市場など存在しないとも感じてしまうのですが、建設業においてカンボジアに進出する日系企業も増えてきましたので、今回は「カンボジアの建設業の労働市場」をテーマであえて書くことにします。
建設業と言えば、カンボジアの主要産業の一つですが、建設業と一括りで言っても多種多様で、例えば総務省が定めている日本標準産業分類によれば、内装業や電器設備工事業なども建設業に含まれます。
私たちCDLの場合、この産業分類に基づいて業務を進めていますので、本ブログでも同様に定義づけしたいと思います。
カンボジアの建設労働者
私が北海道のハローワークに勤務していた頃、建設労働者は季節労働者(冬季に積雪を迎える地域において、積雪などで事業ができないために就労する労働者)の一つでしたので、冬になると、特例一時金という給付金を受給するために、やむ無く失業された季節労働者がハローワークに殺到してきたことを覚えています。
北海道は、10月下旬から峠には雪が降り、寒い年には5月までスキーが楽しめる雪国というイメージですが、建設労働者にとっては、建設現場の作業が一時休止することが余儀なくされ、一時退職をして本州へ出稼ぎをする方も大勢おられるという現実もあります。
カンボジアの場合、年中が夏の様なものですから、北海道のそれと違って、年中作業が続けられる点は良いところなのですが、非熟練労働者の場合、乾季には建設現場で働くものの、雨季には故郷に戻り農業に従事するものも多く、これもまた、ある意味で季節労働者と呼べるのではないかと思います。
そのような建設労働者ですが、カンボジアにおいては日本と同様に人材が不足しているというのが、建設業界関係者の一致する意見です。
建設業界での質と量のミスマッチ
カンボジアの4大銀行の一つであるカナディア銀行の頭取であり、かつ最大手建設会社OCIC社の社長でもある方が会長職を務めるカンボジア建設協会という団体があります。その協会が発行している業界誌の発行人や、OCIC社の副社長をはじめとする建設業界(しつこいですが、内装業や電気工事業も含まれます)の経済人の方々から、建設業界の人材の現状について話をお聞きしますと、カンボジア労働訓練省の傘下機関のNEA(国家雇用機構)の副局長ら行政サイドの方々との話とも符合していまして、簡単に言えば、建設業界では様々な点においてミスマッチが生じているのだということです。
具体的には割愛させて頂きますが、熟練労働者と非熟練労働者の双方にそれぞれ相違するミスマッチ(質と量)が生じており、総じて人材不足を引き起こしています。
ミャンマーには劣るものの、カンボジアは若い労働力が豊富な国だという話しは間違ってはいませんが、それは、女性や高齢者、障害者などの活用が進めば労働力は豊富であると言う日本政府の見解とほぼ同じ意味であり、潜在能力を評価しているに過ぎませんから、実際に労働に従事できる環境かどうかを留意しなければなりません。
質と量によるミスマッチは、なにも建設業だけに限ったことではありませんが、主要産業における課題としての意味は大きいと言えるでしょう。全くの余談で恐縮ですが、労働力不足は建造物の竣工日を後ろ倒しする遠因となりますので、計画が甘いコンドミニアムの場合は、コスト増がプレビルド物件の完成を危うくするかもしれません。
そういう意味では、非熟練労働者の場合ですと、高い賃金を求め労働者がタイに流出していたところで、タイの軍事政権による不法労働者の取り締まりの噂を恐れて、14万人以上のカンボジア人が帰国したとの報道もあり、今後の建設業における労働力不足にどのような影響が出るか、労働賃金の行く末と併せて注視すべきかと思います。
なぜなら、このことはカンボジアに進出する日本企業はもとより、技能実習制度の緩和によって労働力不足の解消に期待を寄せる日本の建設業界にとっても全く無関係ではないからです。
また、電気技師、配管工や溶接工などの職種をカンボジアで採ることは非常に困難であり、また多くの場合は想定より技術レベルが低いので、この点についてはカンボジアの産業人材育成政策や公的職業訓練に僅かながらも望みを持ちたいと思っています。
私がホテルの建設現場の労働環境を視察させていただいた折に出会った若い建築士は、齢25歳なるも実に聡明で、決して良いとは言えない環境の中でも、優秀な若い世代が巣立ちつつあるという印象を受けました。
いずれにしましても、建設業界で進出を検討される企業にとって、カンボジアの建設業の労働市場については関心が高いかと思いますので、そのようなお客様に対しても、人材面からご助言できる頼もしい存在となれるよう、私たちCDLは引き続き邁進していきたいと思っています。
CDL代表
北海道札幌市生まれ。22年間、厚生労働省などで勤務。2012年、カンボジア人青年との偶然の出会いから、能力・スキルに見合った仕事につけない人がいることを知り、カンボジア人に職業を紹介するビジネスを決意。
より詳しい情報を入力して転職支援サービスに申し込む
この記事が気に入ったら
いいね!
最新情報をお届けします
関連記事
おすすめ求人
効率的に多くの転職情報が入手できる!
求人数の豊富さに自信があり、非公開求人もあります。私たちが企業との連絡を代行し、転職希望の方にスムーズな支援が可能です。CDLは、お客様の判断に役立つ生きた情報を提供する自信があります。
1分で簡単無料
転職支援サービスのお申し込み