すぐ辞めると言われるカンボジア人スタッフの定着率をどのようにして向上させるか。【カンボジア人材育成】
先日、JNNC(Japan NGO Worker’s Network in Cambodia)の月例会を、CDLオフィス内で行いました。私からはカンボジアの人材を取り巻く現状と課題について、ご説明しました。様々なご質問をお受けしましたが、NGOが現場で抱える人材面での課題は、企業のそれと大差は無いという印象です。
「カンボジア人スタッフは早く辞めてしまうが、どうしたら長く働いてくれるのか」というご質問はどこでもお受けしますが、定着率の向上(離職率の低減)のための対策は、ひと言で助言できるものではありません。即戦力となる人材が見つかり難いカンボジアの場合、社内における人材育成は不可避ですが、人材育成コストの回収も考慮すると、長期の勤続期間が前提となります。
そこで、どこの企業も、早期退職リスクの低減は重要課題になるのですが、手を尽くしてもカンボジア人スタッフがすぐに辞めてしまうというわけです。
弊社においては、長期の勤続期間を前提として、プレーヤーからマネージャーへの成長を促進させる人材育成を社内で行っていますが、すぐに辞めてしまうということはありません。では、弊社がどのようにして定着率の向上を図っているのか。
その話をする前に、そもそも、スタッフはなぜここで働いてくれるのか、どこに価値を感じてスタッフは働くのか、ということを考えてみて欲しいと思います。
彼らに身を置き換えて考えてみると、様々な理由が思い浮かびます。「お金が欲しいから」という理由が一番大きいという人は多いとは思いますが、逆にそれだけの理由で働く人は僅かです。例えば、家から近いから、スキルや経験が得られるから、雰囲気が良いから、社長が優しいから、好みの異性が働いているから、仲間が好きだから、友人に自慢できるから、親戚から褒められるから、親が喜ぶから、暇を潰せるから..など他にも別の理由がたくさん存在します。
実際は、複数の理由が強弱を持って混在していますから、人によって働く理由のバリエーションは微妙に異なっているのです。これらが、働くことでもたらされる会社からの価値になるわけですが、カンボジア人スタッフが退職するときは、これらの価値が何らかの理由によって毀損し、その総合的な度合いが臨界点に到達したときです。
本人から直接告げられる退職理由は、もっとも大きい理由や、当たり障りの無い理由などを挙げるかもしれませんが、複数の理由で働いているのと同様に、辞めるのも複数の理由があると考える方が自然です。
弊社では、スタッフの一人ひとりが、CDLのどこに働く価値を感じているのかをヒアリングにより分析し、ときどき定点観測して、その価値が毀損していないかをチェックしています。
しかし、注意しなければならないのは、カンボジア人スタッフが求める価値の多くは短絡的であるということです。例えば、居心地が良い、社長が優しいなどの理由は短絡的で脆いものです。社長が厳しく叱っただけで、その価値はあっという間に毀損します。
そもそも、居心地が良い職場とは本当に自分のためになるのか、社長がいつも優しいのは本当に自分のためになるのか、と聞いたら必ずしもそうではないと日本人には直ぐにわかります。しかし、カンボジア人のスタッフには難しい問題です。
自己成長とは自己の限界が広がることですので、自分の限界を超えるような仕事をこなそうとしなければ、自己成長はできません。それには厳しいとか、辛いという気持ちにも耐える必要があることを意味しますが、前述したような短絡的な価値とは対極にあります。
ただ惰性で長く働けば良いというわけではないので、定着促進はあくまで人材育成コストを回収するための前提条件を整えるものですから、働くこととは何か、給料とは何か、キャリアとは何か、といったことを繰り返し伝え、一段高いレベルの価値に気付かせる必要があるのです。
恐らく、この道無くて、先は無いように思います。つまり、人材育成そのものが働くことでもたらされる会社からの最も大きな価値、という状況を作っていくことが理想的だと思っています。
弊社では、自社スタッフをプレーヤーからマネージャーへ意識を変革するという意味と、カンボジア人の求職者にキャリアコンサルタントするうえでの必要性から、社会人基礎力の向上と競争意識の醸成に心がけており、前述のような努力を会社として実施しています。
具体的には、定期的な勉強会やミーティーングを業務時間外に自主参加で開催、実力主義による昇進制度の断行、チーム制によるインセンティブ、プロフィットシェアとPLの開示、語学学習の授業料支援、細かい点を挙げればまだまだ色んな取り組みを行っています。
また、当然のことながら、このようなプランは全員に適用されるものと、選抜して適用されるものがあります。勤続年数がいくら伸びても、人材育成コストを回収するために時間がかかり過ぎるスタッフは、一定レベル以上の人材育成を打ち切らざるを得ません。同時に昇給停止や、後輩に給料やポジションを抜かされるという憂き目を見ます。
当の本人には可愛そうな気もしますが、これもまた人材育成の一環だと思っています。
CDL代表
北海道札幌市生まれ。22年間、厚生労働省などで勤務。2012年、カンボジア人青年との偶然の出会いから、能力・スキルに見合った仕事につけない人がいることを知り、カンボジア人に職業を紹介するビジネスを決意。
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