【カンボジアライフ】カンボジアの偉大な建築家、ヴァン・モリヴァン氏の建築を訪ねる(Part1)
カンボジア・プノンペンの独立記念塔、オリンピックスタジアム、チャトモック国際会議場。これらの建築物を作った人物をご存知でしょうか。これらの建築物を造ったのは、『カンボジアを作り上げた男』 とも言われる人物、カンボジアの建築家ヴァン・モリヴァン氏です。
2017年9月末に91歳で逝去したモリヴァン氏ですが、プノンペンにはモリヴァン氏が造った建築を中心に、1960年代のクメール建築を学ぶことができるツアーがあるんです。
目 次
Khmer Architecture Toursとは
クメール・アーキテクチャ・ツアー(Khmer Architecture Tours:以下KA Tours )は、カンボジアの近代建築、そして植民地時代の建築の理解を深めるためにプノンペンで行なわれているツアーです。2003年にNPO団体として始まったKA Toursは、ツアーの運営だけではなく、カンボジアの文化遺産のデザインや建築に関して議論するスペースの運営、貴重な建築物の調査や保護活動、また建築物への理解を深める啓発活動など、多岐にわたる活動をしています。
今回筆者のツアーを担当してくれたのは、プノンペンの私立大学、ノートン大学で建築について学ぶカンボジア人の学生さんによるものでしたが、流暢な英語で、大変わかりやすいガイドをしてくれました。
クメールの偉大な建築家、ヴァン・モリヴァン氏
(画像はHP:http://www.vannmolyvannproject.org/より)
今回のツアーのカギを握るモリヴァン氏。ヴァン・モリヴァン氏は、1926年、カンポット州に生まれました。1946年にフランス政府からの奨学金を得て、47年から56年にかけて、フランス・パリで建築や美術、そしてクメールの文化について学びます。1956年にカンボジアに帰国してから、内戦が始まる1970年までの間、驚くべき数の建築物を建築しました。さらに驚くべきことに、モリヴァン氏は建築家としてだけではなく、プノンペンの都市のマスタープラン開発、大学の学長、そして外務大臣といった数々のキャリアを積み重ねた人物でもありました。彼の建築は、クメールの伝統と近代の革新を組み合わせたものであり、『New Khmer Architectures』の第一人者であり、多くのカンボジア国民に慕われた人物でした。
さて、彼のマスターピースを訪ねるツアー、一体どのようなものなのでしょうか?
New Khmer Architecture Tour of the 1960sの概要
このツアーでは、モリヴァン氏が時代を牽引した1960年代、同氏によってつくりあげられた、「新クメール建築」と呼ばれる建築物を訪れます。訪れる場所は以下の3つ。
①プノンペン王立大学(Royal University of Phnom Penh)
②100棟の戸建て住宅プロジェクト(One Hundred Houses Project)
③オリンピックスタジアム複合施設(National Sports Complex)
本記事では②と③についてご紹介したいと思います
100棟の戸建て住宅プロジェクト(One Hundred Houses Project)は、プノンペンの郊外に建設された住宅群のことを指します。1965年、カンボジアの国立銀行で働く職員のため、低価格住宅のプロジェクトとしてスタートしたこの集合住宅プロジェクトは、伝統的な高床式のクメール建築を発展させ、近代へと適応させたものでした。
カンボジアの高温多湿な気候に最も適した建築様式、高床式をさらに発展させた建築様式
伝統的なカンボジアの建築様式に見えますが、モリヴァン氏は、カンボジアの気候に最も適応する建築様式はやはり高床式だと考え、日差しを防ぐための屋根の軒先を広げること、空気の循環を促す窓を大きくするなどをして、既存の建築様式をさらに発展させたそうです。
水場と生活スペースの分離
また、浴室やお手洗い、台所などの「水場」と居間や寝室にあたる「生活スペース」をそれぞれコンクリート、そして木材という異なる素材で作り上げたことも、この建築に見られる特徴だといいます。これにより、家屋の寿命が伸びたといいます。さらに、水場を西側に設計することで、昼間の最も暑いときに生活スペースができるだけ涼しくあるように考えられていたこと、そして、水場=「公」、生活スペース=「私」と分離されていたことも挙げられます。これにより、外部から来て少しお手洗いを借りたい人であったり、台所先で話すといったことであっても、「私」の領域に立ち入ることがなかったということで、空間形成までも配慮されていたことがわかります。
ジクザクな配置
さらに、こちらの航空地図を見ていただければわかるのですが、このプロジェクトはジグザクに配置されているんです。
この理由は主に二つあるといいます。第一に、空気の循環を意識しているということ、そして第二に、窓や戸を開け放したとしても隣の家の中が見えないと同時に、自分たちも見られないようにするというプライバシーへの配慮だと言います。
一見、あまり変哲のない建築物に、このような数々の工夫がなされていることを聞き、その細部にわたるこだわりにとても驚きました。しかし、この家屋も、建てられた当時のままになっているのはわずか数件に過ぎません。クメール・ルージュによりこの住宅に住んでいた人々も追い出され、家屋が破壊されたため、残っているものが少ないという理由、またかろうじて残ったものであっても、リノベーションを経てモリヴァン氏の建築様式に沿っていないもの、さらには人が住まず朽ち果てつつあるものなどが点在していました。
貴重な建築群が、特別な保護を受けるわけでもない現状を、ガイドさんも憂いていました。
まだまだ続くツアー。長くなってきましたので、続きは次の記事をご覧ください!
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